「建物の“壁”を活かした環境対策」。
そう聞いて、すぐにイメージできる人はまだ多くありません。

しかし今、福島県内を中心*“壁面緑化”という取り組みが、企業や建築関係者から注目を集めています。
背景には、脱炭素やヒートアイランド対策といった環境課題、SDGs・ZEB対応への意識の高まり、そして企業のブランディングやCSR活動の一環としてのニーズがあります。

特に地方都市である福島において、地域資源を活かした持続可能な建築への関心が高まっていることも見逃せません。
また、壁面緑化は見た目の美しさだけでなく、断熱性・省エネ性の向上や補助金対象になるなど、実務的なメリットもあります。

この記事は、

「環境配慮型の提案で差別化したい」
「地元の建築に強い住宅会社として信頼されたい」
そんな方にこそ、ぜひ読んでいただきたいコラムです。

この記事のポイント

• 壁面緑化が福島で注目されている背景がわかる

• 企業・設計サイドにとっての導入メリットが明確になる

• 福島という地域特有の注意点や提案ポイントがわかる

目次

• 壁面緑化とは？福島での関心が高まる背景
• 福島で壁面緑化が注目される3つの理由
• 壁面緑化の導入で得られる3つの効果
• 福島エリアでの施工・提案における注意点
• まとめ｜壁面緑化は、地域に根ざした建築価値を高める選択肢

壁面緑化とは？福島での関心が高まる背景

壁面緑化とは、建物の外壁部分に植物を植え込み、緑のカーテンのように建物を包み込む都市型の環境対策です。近年、福島県内でも企業や施設がこの壁面緑化に注目しはじめています。気候変動対策、景観向上、省エネ効果に加え、ZEBやSDGsへの取り組みとしても注目され、設計や建築の新たな付加価値として関心が高まっているのです。

環境課題と都市機能への対応策として

地球温暖化やヒートアイランド現象は、都市部だけの課題ではありません。地方都市でもコンクリートによる熱の蓄積や局地的な気温上昇は年々深刻化しています。

そうした中で壁面緑化は、建物そのものが「緑を生む構造体」となり、都市の温度上昇を抑制しながら、CO₂削減にも貢献できる具体的な手段として注目されています。

加えて、空気中の浮遊粉じんを葉が吸収・分解する働きがあり、自然のフィルターとしての役割も期待されています。これは、オフィスビルや公共施設だけでなく、集合住宅や商業施設にも応用が可能です。

特に建物が密集する場所では、壁面を活用することで土地を増やすことなく緑の空間を創出できる点が、設計・施工側にとっても大きなメリット。限られた敷地内でも環境価値をプラスできる取り組みとして、多くの建築関係者の関心を集めています。

福島市が推進する「緑のまちづくり計画」

福島市では、「花と緑の基本計画」に基づき、都市部でも自然を感じられる持続可能なまちづくりを推進しています。その中でも、民間建築物における壁面緑化や屋上緑化の導入は、都市景観と環境機能を両立させる重要な施策として位置づけられています。

近年では、駅前再開発エリアや公共施設・病院などで、緑化を取り入れた建築が徐々に増えてきました。特に福島駅西口の市街地整備事業などでは、市との連携によって建築物の外構計画に緑化が組み込まれるケースも見られています。

こうした取り組みは単なる「美観の向上」だけでなく、福島の地域性に根ざした“自然と調和する建築”を象徴する事例として注目されています。

住宅会社や工務店、設計事務所にとっても、自治体の方針と連携した提案は、施主や法人クライアントに対して高い信頼性と地域貢献性をアピールする絶好の機会になります。

福島で壁面緑化が注目される3つの理由

福島県内では、都市環境や地域経済の持続可能性を考える中で、壁面緑化への関心が着実に高まっています。その背景には、単なるエコ意識を超えた、企業や行政が直面している実務的な課題があります。

ここでは、特に福島という地域特性において、なぜ今、壁面緑化が注目されているのかを3つの視点から解説します。

壁面緑化が福島で注目される3つの理由

• 脱炭素社会を目指す地域の温暖化対策ニーズ

• 建築・設計の現場で高まるSDGs・ZEB対応の要請

• 企業活動におけるブランディングとCSRの一環として活用可能

地域の脱炭素・温暖化対策ニーズ

福島県では、再生可能エネルギーの導入やエコタウン構想を背景に、地域全体で“脱炭素社会”への転換を図る動きが進んでいます。
その一環として、建築物単位での省エネ・断熱強化が求められており、壁面緑化は「外構による自然断熱材」として注目されています。

植物の蒸散作用により、壁面や周辺の温度を数度下げる効果があることは複数の研究でも示されており、夏場の冷房負荷軽減にもつながります。

さらに、ヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素吸収といった環境貢献型の付加価値もあり、企業の環境配慮活動として提案しやすいのが魅力です。

とくに福島のような“都市と自然が共存するエリア”においては、景観と機能性を両立できる提案として、壁面緑化は非常に親和性の高い施策といえるでしょう。

企業ブランディングやCSRへの活用

今や、企業の価値は「何を提供しているか」だけでなく、「どう社会と関わっているか」によって評価される時代です。

壁面緑化は、来訪者や地域住民の目に触れる機会が多く、環境配慮を“見える化”できるブランディング施策として活用されています。
特に商業施設や医療機関、教育施設などでは、外観に緑を取り入れることで安心感や信頼感、先進性を与える効果があります。

また、自治体との連携や地域雇用の創出といった観点でも評価され、CSR（企業の社会的責任）やESG経営の一環として位置づけられるケースも増えています。

福島のように、震災からの再生を経て「持続可能なまちづくり」が求められる地域において、企業が環境施策を発信することは、地域との共生を象徴するアクションにもなり得るのです。

壁面緑化の導入で得られる3つの効果

壁面緑化は、単に“緑を増やす”という見た目だけの施策ではありません。建物の性能向上、地域との関係構築、経済的メリットなど、導入することで得られる効果は多岐にわたります。ここでは、特に企業・法人施設にとって重要な3つの効果について解説します。

壁面緑化で得られる主な効果

• 建物の断熱・遮熱性能が向上し、冷暖房効率UP

• 景観価値と企業イメージの向上に直結

• 補助制度を活用することで導入コストを圧縮可能

建物の断熱・遮熱性向上による省エネ効果

植物による壁面緑化は、太陽光や外気から建物を守る“天然のシェード”として機能します。葉や茎が直射日光を遮ることで、壁面温度が上昇しにくくなり、室内温度の安定につながります。

特に夏場は、外壁が熱を吸収することで室温が上がり、空調負荷が高まりますが、緑化された壁面では周囲より2〜5℃程度の温度低減効果が報告されています。

これにより、空調の使用量を抑制し、省エネ効果とランニングコストの削減が期待できます。加えて、冬場でも一定の断熱効果があるため、冷暖房の両面でメリットがあります。

断熱材や高機能窓といった設備と組み合わせることで、ZEB（ゼロエネルギービル）化にも貢献できるのがポイントです。

都市景観向上と企業イメージの差別化

建物の外観に緑を取り入れることは、単なる装飾ではなく“企業の姿勢”を示す要素になりつつあります。
壁面緑化は、「環境に配慮している」「地域と共生する意識がある」といったポジティブな印象を視覚的に伝えることができます。

特に福島のように再生と共創が重視される地域においては、地域と調和する建築物として評価されやすく、企業ブランディングの一環としても有効です。

また、来訪者や顧客・地域住民にとっても、緑のある空間は心理的に好印象を与え、「信頼感」や「親しみやすさ」につながります。
公共施設や医療・福祉施設では、癒しの空間演出としての導入事例も増えています。

これらの効果は、競合との差別化や企業価値の向上に直接つながる要素として、今後さらに注目されていくでしょう。

補助金活用によるコスト削減メリット

壁面緑化は、その設計・施工・維持管理に一定のコストがかかるため、初期投資に不安を感じる企業も少なくありません。
しかし近年は、国や自治体による補助金制度や助成金を活用して導入コストを抑える動きが広がっています。

福島県内では、「都市緑化推進事業」や「再エネ・省エネ設備導入補助金」など、環境負荷低減に貢献する建築に対して一部費用が助成される仕組みが用意されています（年度によって条件変動あり）。

また、東京都や横浜市などでは、壁面緑化を評価する独自の支援制度も登場しており、今後福島市や郡山市でも同様の制度設計が進む可能性があります。

さらに、補助金対象となる場合は、設計・申請段階からの対応が重要になるため、早期のパートナー連携が成功のカギとなります。

こうした制度をうまく活用すれば、コスト負担を抑えつつ、高機能で環境価値の高い建築提案が可能になります。

福島エリアでの施工・提案における注意点

壁面緑化は汎用的な環境施策のように見えますが、地域の気候や環境条件に応じた設計・施工が成功のカギを握ります。
福島エリアで壁面緑化を導入する際には、特に冬季の積雪・凍結への対応、そして施工後の維持管理体制の構築が重要です。ここでは、導入を検討する際に押さえておきたい2つのポイントをご紹介します。

冬季対策と積雪への配慮が必須

福島県は、内陸部を中心に冬季の寒さと積雪が厳しい地域です。そのため、壁面緑化を導入する際には、植物の耐寒性だけでなく、積雪荷重への構造的配慮も不可欠です。

たとえば、ツタ類や低木性植物を使用する場合でも、根元への積雪による圧迫や、水分過多による根腐れが懸念されます。
また、雪解け時の落雪や凍結による設備破損を防ぐためには、植栽スペースの排水計画や設計段階でのシミュレーションが求められます。

さらに、凍結防止ヒーターの設置や、積雪時の保護ネット・構造補強の追加工事など、地域性を考慮した工夫が重要です。

「夏の暑さ対策」としてだけでなく、“四季を通じて安定稼働できる壁面緑化”を実現することが、長期的な信頼と効果につながります。

まとめ｜壁面緑化は、地域に根ざした建築価値を高める選択肢

福島で壁面緑化が注目されているのは、単なる“トレンド”ではありません。
温暖化対策やZEB・SDGsへの対応といった大きな社会的要請の中で、地域に根ざした環境貢献を実現できる、建築的な解決策として再評価されているのです。

今回ご紹介したように、壁面緑化には断熱効果による省エネ、景観向上による企業価値の強化、補助制度を活用したコスト抑制といった実務的なメリットがあります。
特に福島のような四季が明確なエリアでは、「地域特性に配慮した設計・施工」が求められるため、地元企業が担うべき役割も大きくなるでしょう。

建物の性能向上と、企業・地域の未来づくりを同時に実現する壁面緑化。
今後の提案やプロジェクトの中に、“緑を纏った建築”という価値を取り入れてみてはいかがでしょうか。